キッチンバイオ1

DIYbioは科学を一般市民に開放した。しかしその一方で、それは公衆衛生や環境にどのような影響を及ぼし得るのだろうか?

 科学者たちはインターネットのオークションサイトで実験器具を売買できるようになってきた。そしてDNA抽出や解析の価格はますます下落している。このように装置が手に入れられるようになってことで、誰もが興味があれば自宅で実験ができるようになってきた。一方で、一部の議員や科学者達からは公衆衛生や環境安全に危険をもたらす可能性があると危惧されている。
 こうした危惧にも関わらず、DIYbioの動きは活発化している。例えば遺伝子検査のしくみに魅了される人々がいる。例えばある女性は自分で自分の遺伝子検査して祖先をさかのぼるために、過去9年間で数千ドルをかけてきた。彼女は科学の知識はなかったが、About.comで調べたプロトコールを使い、試験管やビーカーを20ドル以下で購入して、DNAの抽出を行った。彼女はDNAの抽出は「少しも難しくない」と言う。彼女が言うには、DNAを見ることが楽しい、唾を送って解析してもらっても実際には自分のDNAを見ることができない。
 もう一歩進んだ実験家もいる。MITでバイオエンジニアリングの学士をとった後、彼女は自分のDNAを解析している。彼女の父親がヘモクロマトーシス(鉄の代謝異常による疾患であり、全身の臓器に鉄が過剰に沈着して臓器障害をきたす。原因遺伝子が明らかとなり、遺伝子診断により早期発見・早期治療が可能になると考えられる)で苦しんでいるのを見て、自分がヘモクロマトーシスのキャリアであるかDNA解析を300ドルで頼むこともできた。しかし、彼女は同じお金で実験器具を買い、DNA解析を自分で行った。
 「私はハッカーで、ものづくりをしたいのです」と言う。「生物は探求し理解しようとするには素晴らしいシステムです」。実際彼女は少なくとも一つのハイリスクの突然変異C282Yを保持していることを発見してしまった。彼女は「まだコントロール実験の結果がはっきりしていないので、これから繰り返そうと思います。自分の健康保険が準備できれば精度を上げてこの実験を繰り返したいと思います」。彼女は、病気のリスクを早期に発見することで、病気になるのを待っているだけでなく監視することができる。
 彼女たちは急成長するアマチュアバイオの運動の一部だ。他にもアマチュア鳥類学者、考古学者、天文学者がいる。DIYbioは単なる趣味では留まらない。科学を開放し、多くの人々が生物学的データにより直接的にアクセスできるようになる。(continue)

(Kitchen biology, EMBO reportsより)