代謝フラックス

Systems Biotechnology


生物の持つ物質合成系を利用すればさまざまな物質を簡単で安く合成できるようになる。ここで重要となるの技術が代謝フラックス解析だ。現状ではこの工業応用にさまざまな問題点があるが、関連ツールが発展してゆけば、非常に効率の良く物質合成システムを設計できるようになる。
以下、この話題について最近の論文より。

代謝フラックスの解析は、細胞の代謝の最終的な出力を決定し、バイオテクノロジーに関する生産性のボトルネックを検出するための重要なツールだ。 13Cをベースとした代謝フラックス解析(13C-MFA)とフラックスバランス解析(FBA)には様々な応用可能性を秘めている。しかし、フラクソミクス(fluxomics)研究にはまだ大きな問題がある。第一に、13C-MFAとFBAの両者に、フラクソミクスに関連する発見や代謝情報の適用を制限する技術的な問題点がいくつかある。第二に、フラクソミクス結果とその他のオミックス研究の間にギャップがある。代謝制御システムは複雑であるため、解析代謝ネットワーク正確な予測や解析が難しい。第三に、代謝ボトルネックやホスト細胞が受ける合成反応によるストレスの原因を特定できても、そのホスト細胞固有のシステムを崩し、効率よく新たなしすてむを 導入することは難しい。第四に、酵素反応のステップ数が増えるに従って製品の収量は減少してしまう。この減少は、制限段階にある酵素によらず、それぞれのステップで見られそれが蓄積していく。第五に、ハイスループットのフラクソミクスツールはモデル生物以外を主な対象としておらず工業バイオテクノロジーへの応用を最大化するものではない。微生物をホストにして効率的な代謝経路を設計には、フラクソミクスツールを改良し、上記の問題点をより深く理解する必要がある。
(Xueyang Feng, Lawrence Page, Jacob Rubens, et al., “Bridging the Gap between Fluxomics and Industrial Biotechnology,” Journal of Biomedicine and Biotechnology, vol. 2010より。)